シンシア活動報告2008

 
◆現在の「シンシア」

  ひきこもりや対人不安などを抱える方が集い、そこから一歩を踏み出せるようにとの願いを込め始動した、自助グループ「シンシア」が昨年10月で丸3年を迎えました。 

  自助グループやフリースペースは数多くありますが、志高く立ち上げても参加者数の低迷や遊山的な問題など、さまざまな理由で休止・解散するケースも数多くあります。その中で、3年以上も継続できているのは本当に喜ばしいことです。

 シンシアの存続には経済的な努力も不可欠です。参加者への開催日などの通知は、郵送のほかにもインターネットや電子メールを活用し、限られた予算の中で効果的な情報提供を心がけています。

 また、外部の方にも広くシンシアの活動を知っていただくためインターネットでの広報にも力を入れ、同様に支援を行っている他の会のホームページからも、シンシアの活動予定がわかるようにしています。

 そして、何よりシンシアに欠かせないのがボランティアスタッフの存在です。現在は8名ほどの方がお手伝いをして下さっています。その顔ぶれはさまざまですが、この1年でヨーガの講師ら2人の女性が新たに加わり、女性の当事者も参加しやすい環境が整いつつあります。また、各宗の僧侶の協力も得られ、参加者に対してよりきめの細かい対応ができるようになりました。

 このような協力の下、、昨年10月からは、恒例のフリートークの前に、坐禅やヨーガの体験を1時間ほど取り入れることも試みています。

◆年末プログラムの様子

  昨年12月17日、当日は朝からの雨。この日、年内最後のシンシアが東京・港区の光明寺で行われました。本堂入口には「楽しく年越し隊」と筆字の紙を貼り、スタッフ一同で参加者を待ちました。この日は一年間お世話になったお寺に感謝をし、大掃除をさせていただこうと予定していました。

午後2時、この時点での参加者は3名。 はじめに『法華経』の解説を行った後、お経を参加者・スタッフ全員で読みました。 そして、あいにくの雨のために当初予定していた境内の清掃はできませんでしたが、春から秋まではカフェテラスとしても使われている本堂前テラスの清掃を行いました。

  30分ほどで清掃は終了。その後は本堂にカーペットを敷いて車座となり、お茶で体を暖めながら一休みしました。それから、順番に自己紹介や近況報告を始めていきました。 参加者の話からは、それぞれが抱えている問題や事情が垣間見えてきます。派遣社員として働いていたが、雇用を打ち切られたために辛い思いをしているといった身の上話も出てきました。連日報道されている雇用をめぐる問題が身近なものであることを実感させられます。
 
 参加者のある男性は、昨年の秋ごろから毎回参加するようになりました。 彼は、穏和で大人らしい雰囲気を漂わせています。そして、その繊細な心遣いにはいつも感心させられます。たとえば、シンシアの日程を通知するためにメールの一斉送信をすると、彼からは決まって感謝の言葉が返ってくるのです。

  彼の話によると、就職後に人と会うと強い緊張感を覚えるようになり、人と接することが辛くなり、ひきこもり状態になってしまったそうです。そして、人と接することに慣れて実社会に戻ることを願い、シンシアに参加するようになったそうです。彼は、最近では「ご縁つながり隊」にも参加するようになりました。

  ご縁つながり隊とは、シンシアの参加者を対象に、全青協事務局で事務作業などを経験してもらおうという試みです。 実社会で早く仕事に励みたいと願っている方は多いのです。しかし、現実にはすぐ適応することが難しく、離職せざるを得ないことも少なくありません。 そこで、仕事や人間関係に慣れる場として、その足がかりになればと「ご縁つながり隊」があります。作業中も、その後の茶話会でもさまざまな話が飛び出します。それも、また大切なことだと考えています。

  近況報告の最中には、別の棟で用意していたスタッフ手作りの白玉団子が振る舞われました。味は、きなこ・大根おろし・あんこの3種類。各自好きな味を楽しみつつ、話はいつまでも尽きません。雇用の打ち切りなど、深刻化している昨今の社会問題の話題や、自らのひきこもりの経緯、将来への希望などが語られました。 率直な言葉をお互いに交わすことで共感が生まれ、一人ひとりのこころは少しずつでも解放されたようにも見えました。この日は、最終的には初参加という2名を含め、計6名が集まりました。

  午後5時、スタッフの青年僧の唱導で念仏を参加者一同で唱えて、会は終了しました。

◆これからのシンシア 

  シンシア参加者の話を聴くと、社会の荒波に耐えられず、結果としてひきこもり状態となってしまった方が多くおられます。しかし、彼らは心新たにして仕事に励みたいと強く願っています。

 現在、経済優先主義の波が我が国でも大きな弊害をもたらしています。人が競争原理の価値観の中に投げ込まれ、その競争の中で生じた「弱者」が置き去りとなるあり方が定着してきました。企業が雇用の調整弁として非正規雇用を増やす中で、経済格差も拡大しています。 その中で、彼らはますます実社会に戻るのが困難な状況に置かれています。彼らの居場所であるだけでなく、実社会とつながる糸口となり、シンシアはこれからも大切な役割の一端を担いたいと願ってやみません。(渡)