2007年の活動報告です。                            
                                                                                                                                          

自助グループ「シンシア」2007活動報告

てらネットENの活動の一環として行っている、ひきこもりや対人不安などを抱える方々向けの自助グループ「シンシア」では、昨年も、東京港区の光明寺において、ひと月に1度の割合で会合を定期的に開催し、大勢の皆さんにお集まりいただきました。2007年のシンシアの活動を、簡単にふりかえってみたいと思います。

まず、シンシア開始の際には仏さまへお経を唱えますが、そのバリエーションが増えました。2006年までの「三帰依文」と「般若心経」に加え、2007年は「御文章」「無量寿経」「佛遺教経」などもレパートリーになりました。いろいろなお経に接することにより、少しずつ仏教の世界を垣間見ていただければ嬉しい限りです。
      
その後は、毎回、自己紹介を経て、お茶をいただきつつ雑談をするという流れですが、さまざまな物事に興味を持っている参加者と、多様な経歴を有する運営スタッフ・メンバーが参画していることにより、実にバラエティー豊かな話題が飛び交います。旅行、美術、グルメ、芸能人、スポーツ、インターネット、ゲームなどなど…。出会いの場であり、情報交換の場であり、新しい何かを発見できるかもしれない場所であるシンシアを、これからも、一人でも多くの方に有効活用していただけるように願って止みません。

また、3月からは、シンシアの活動に、就労支援プログラム「ご縁つながり隊」が加わりました。たとえば、「オフィス編」では全青協の事務所において、機関誌『ぴっぱら』や教材の発送作業をしていただいたり、「都会のオアシス編」では、シンシア会場の光明寺で開かれている「神谷町オープンテラス」の店員として、接客体験をしていただきました。また、「お寺編」では、神奈川県の長徳寺で草むしりや清掃をしていただくといった具合に活動をしています。

そして12月には、年末特別お楽しみ企画「彼く歳此る歳」を開催し、成功裏に終了しました。

◆年末特別プログラムの一日

「彼く歳此る歳」は、12月19日に、東京港区・光明寺において開催されました。参加者は総勢22名。普段のシンシアは若者限定ですが、今回は親御さんもご一緒いただき、修行やコンサート、茶話会などの特別お楽しみプログラムにご参加いただきました。それでは当日の様子を、簡単にふりかえってみることにしましょう。

午後1時半。会場の光明寺本堂には、参加者が少しずつ集まり始めました。午後2時を少し過ぎたぐらいのところで、開会宣言。プログラムの初めは法要です。いつもの「三帰依文」に加えて、「慈悲経」、「重誓偈」の順番でご本尊の阿弥陀さまにお経をお唱えし、そしてお焼香を致します。慈悲経には、「すべての生きとし生けるものよ幸いなれ」という一文がありますが、心に響くこの言葉を、いつまでもかみしめたいものだと思いました。

◆さまざまな体験
        
続いては、全体を2グループに分け、本堂では坐禅に取り組んでいただき、離れの会館では写仏を体験していただきました。それらと同時進行で、調理場では「年越しすいとん」の準備が着々と進んでいます。

午後3時過ぎ。本堂では坐禅に続いて歩行禅を行っています。本堂のみなさんは精神を集中させ、一生懸命にゆっくりと歩き続けます。そして、会館では引き続き写仏を行っています。どの参加者も無心に仏画を描き写していらっしゃいます。その間にも、参加希望の方が続々と会場へいらっしゃるので、受付業務はもはや、てんてこ舞いの状態です。以下は歩行禅に参加された方の感想です。「動き方のパターンを変えてみることで楽しめた」「バランスを取るのが難しかった」「頭の方が疲れてしまった」など。

午後4時近く。本日のメイン・イベントであるミニコンサートが始まるので、全員がもう一度本堂に集まりました。ソプラノ歌手・吉水知草さんと、ピアニスト・森田真帆さんのご出演で、仏教讃歌、オペラ、童謡、スタジオジブリの映画主題歌などで組まれた1時間は、瞬く間に過ぎ去りました。吉水さんの透き通りつつも力強い歌声と、森田さんの奏でる美しいピアノの音色に、参加者はみな夢中で聴き入っていました。童謡は、会場一同で元気よく斉唱しました。 

午後5時。会場を会館に移して、茶話会が行われます。シンシア参加者、コンサート出演者、運営スタッフ・メンバー全員で「我 今幸いにこの清き食を受く」と唱え、年越しすいとんをいただきます。「いただきます」というのは、生きているものの命をいただくということ。だしがよくきいていて、とても美味しいすいとんをいただきながら、改めて食事の際のお作法を見直すきっかけになったことでしょう。しかし、終わりのあわただしさにかまけ、「ごちそうさま」の挨拶を一同忘れてしまったのはここだけの話です。 

運営スタッフが後片付けをし終わって本堂に戻ると、お坊さんの法話が行われています。自分自身、自分の身近な人、そして世界すべての人が幸せでありますように…。そんなお話が聞こえてきました。午後6時過ぎ。最後にもう一度「三帰依文」をお唱えして、4時間にわたる「彼く歳此る歳」、そして2007年のシンシアの活動が幕を閉じました。
        
◆2008年へ向けて

2008年の「シンシア」、そして「てらネットEN」の事業は既に動き出しています。シンシアの主役は、誰あろう、会場に足を運んでくださる参加者の皆さん、お一人お一人。毎回参加してくださっている方も、以前参加されていた方も、そして、まだシンシアに足を運んでいない方も、これからも一緒に作り上げていけたらと考えています。皆様の暖かいご理解と御支援のほど、今後ともよろしくお願い申し上げます。(池田 太郎)

対人関係療法(IPT)入門講座開催

  てらネットENでは、全青協と共同で、さる11月9日から2日間にわたり、東京グランドホテルにて「対人関係療法(IPT)入門講座」を開催いたしました。

講師には、今年1月から本誌でご執筆いただいている精神科医水島広子先生をお迎えして、その理論と実践を学びました。
      
初日の講演では、対人関係療法の現在までの歩みと基本的なスタンスが紹介されました。

対人関係療法は、米国で1960年代に開発されてから実に30年以上の長い期間にわたって他の精神療法との比較、臨床研究が続けられました。

そのため、この治療法は日本でほとんど知られなかったものの、遺伝的要因による統合失調症やそううつ病以外の心の病全般に有効であり、認知行動療法を上回る、薬物治療と同等の効果を得られるものであることをご説明いただきました。

次に、対人関係療法を進める基本的なスタンスについては、「重要な他者(自分の情緒に最も大きな影響を与える人)」との現在の関係に焦点を当てて行うものであり、現在の状態が病気によるものであることを明確に伝えて患者と治療者が一緒に病気に向き合う姿勢をとり、患者が自分を責めないようにしながら治療を進めるものであると語られました。

また、マニュアルや道具を用いないこの治療法では、患者の心的苦痛の原因となる対人関係が、@悲哀 A対人関係上の役割をめぐる不和 B役割の変化 C対人関係の欠如という対人関係の4つの問題領域のどこにあるかを探り、まずしっかりと戦略を立てることが肝要であると示されました。

そして、最もこの治療法で特徴的な技法である「コミュニケーション分析」においては、現在の対人関係に対する期待のズレが問題の原因であり、期待のレベルを調整していく「気持ちの交通整理」を行うことが大切であることを、参加者から投げかけられるさまざまな事例や質問に答えながらご教示いただきました。

翌2日目の講演では、水島先生のご指導のもと、参加者が対人関係療法を実際の事例をもとに体験的に学び、2日間の対人関係療法入門講座を終了しました。
        
この講座を通じて、参加者がひきこもりや不登校など、コミュニケーションに関する悩みを抱えた現代の子どもたちに向き合う際の、有効な手段として活用していただけることを願っています。

自助グループ「シンシア」活動報告

 てらネットENでは、2005年10月より、ひきこもりがちな若者を支える自助グループ「シンシア」の活動を実施しています。現在行われている具体的な活動としては、若者の居場所、就労支援プログラム「ご縁つながり隊」、お寺での合宿などがあります。

◆お寺の居場所

 そのうち「シンシア」の活動の中心となっているのが若者の居場所で、月に一度午後2時から5時まで、東京・港区の光明寺をお借りして、開催しています。貸し会議室やマンションの一室などを借りて開いている、セルフヘルプグループやフリースペースというのは、多々あります。けれども、「シンシア」はお寺さんの本堂が会場です。お寺の醸し出す独特の雰囲気に安心感を覚え、気に入ってリピーターになって下さる参加者も少なくありません。また、ひきこもりやニート、不登校を経験した若者たちが「シンシア」運営メンバーとして参画しており、当事者の目線に立って、少しでも当事者の気持ちやニーズを理解しようと心がけています。

◆シンシアの一日

 ここで、ある日の「シンシア」の活動についてご紹介しましょう。

 午後1時半ごろから、光明寺本堂に若者たちが集まってきます。彼らはひきこもりを経験したり、対人関係構築や対面によるコミュニケーションにやや不安を抱えていたり。年齢層も10代から30代以上までと様々ですし、居住区域も首都圏全般にわたって幅広いです。回によっても違いますが、最近は毎回10名前後の方にご参加いただいており、今年に入ってからだけでも、毎回の新規参加者は若干増加傾向にあります。
          
 午後2時を少し回ったくらいを見計らって、いよいよ今月の集まりの開始です。まずは光明寺のご本尊様に般若心経をお唱えして、お寺を使わせていただくためのご挨拶。続いて参加者、運営メンバー、事務局の全員で車座になって、自己紹介。自分の趣味、近況報告、「シンシア」に来たきっかけなど。ここ数ヶ月の間でも、てらネットENのホームページやブログで「シンシア」を見つけていらっしゃる方が、非常に増えてきています。
          
 その後のメニューは、その時々によって異なるのですが、お坊さんの法話を聞いたり、お寺の近くを散策したり。時には卓球などのスポーツや、軽いストレッチ体操で体をほぐしたり。コミュニケーション能力向上のための簡単なワークや、椅子坐禅なども行いました。
          
 3時過ぎくらいになると、熱いほうじ茶をいただきながらしばしの休憩。お土産や差し入れのお菓子などを片手に、あちこちで話の輪が咲き始めます。参加者の中には、会場に足を踏み入れた当初は、緊張のあまり表情がこわばっている方も少なくないのですが、この時間帯になると、彼らも少しずつリラックスしてくるように感じられます。
          
 お茶を飲みつつ少人数のグループが自然発生的に出来上がって来ると、フリートーク中心の時間になります。話題はほとんど雑談で、例えば美術、音楽、スポーツ、ゲーム、インターネット、観光名所など。幅広い話題が毎回飛び交っています。
          
 午後5時が近づいてくると、今日の「シンシア」もお開き。最後はみんなで本堂の後片付けと清掃をして、三帰依文を唱えながらもう一度ご本尊様にご挨拶。その後は会場近くのファミリーレストランで、お茶を飲みながら二次会が開かれますが、自助グループの限られた時間だけでは話し足りないのか、毎回盛況です。
          
◆さまざまな活動
          
 「シンシア」では、月一回の自助グループの他、今年3月から就労支援プログラムも実施しています。全青協の事務局で「ぴっぱら」の発送作業を体験したり、光明寺で開いている「神谷町オープンテラス」で喫茶業務の手伝いをしたり。こちらにも毎回数名の参加者にお越しいただいています。 「シンシア」に参加されるすべての方々とともに、これからもより充実したプログラムを作り上げて行きたいと考えています。(池田 太郎)

就労支援プログラム「ご縁つながり隊」

 2007年3月14日、東京・築地の全青協事務所において、「てらネットEN(縁)自助グループ『シンシア』ご縁つながり隊(就労支援プログラム)・オフィス編」の第1回目が実施されました。

 てらネットENでは、現在月1回、ひきこもり当事者・経験者のための自助グループを、東京都内のお寺で開催しています。今回、ひきこもりの若者たちへの就労に力を注ぐプロジェクトを立ち上げたことにより、多くの当事者の切実なニーズに応えていけるのではないかと考えています。

 当日の参加者は、総勢7名。事務所から近い首都圏は勿論ですが、遠くは東海地方から参加された方もいらっしゃいました。7名の若者の皆さんには、3時間ほどの軽作業を通じ、事務所で働くとはどういうことかを感じてもらう、有意義な機会になったように思います。

 具体的な作業内容としては、4月8日の「花まつり」のための教材(ぬり絵、風船、ポスター、絵はがきなど)の発送作業を手伝っていただきました。全国のお寺からご注文いただいた教材を倉庫から取り出し、必要な数量を数え、ダンボールに梱包していきます。数百個や数千個単位で注文された商品を、いかにして正確に勘定し、丁寧に梱包するか。参加者の方々は、慣れない作業に少々戸惑いつつも、非常に神経を遣いながら、確実に作業をこなして下さいました。

 全青協の事務所では、発送作業の他にも、パソコンのデータ入力や、会報紙「ぴっぱら」の編集など、多くの作業があります。当事者の個々の持っている能力や適性に応じて、今後も多様な形での体験をできるように、受け入れ態勢を整えて行く予定です。

 就労支援のプログラムを通じて、一人でも多くの若者達が、社会との接点を見出す手がかりをつかんで欲しい、そんなことを考えさせられる一日でした。(池田 太郎)