2005年の活動報告です。         

2005てらネットENスタディーツアー 開催

 

てらネットENでは、京都府綾部市にある情緒障害児短期治療施設「るんびに学園」を11名の参加者とともに訪問しました。参加者の多くは、これからの青少年問題に取り組みたいと考えている方ばかりでした。

「るんびに学園」は、「軽度の情緒障害を持つ児童を、短期間入所、あるいは通所させて治療する施設」と定められています。対象児童は、先天性、後天的な身体の障害や、知的な発達障害を伴う子どもだけではありません。家庭内の人間関係や虐待、学校での対人関係、日々の生活ストレス症状などから社会適応が困難になっている児童も対象としています。

 この施設の理事長は藤大慶さん(浄土真宗本願寺派)です。自坊で「悩み事相談」を始めたのをきっかけに、子どもたちと接するようになりました。また子ども会「るんびに日曜学校」をはじめ、さらに和太鼓を習う「るんびに太鼓」を開設しました。そして合宿生活ができる「短期るんびに苑」を立ち上げ平成15年に「るんびに学園」の開園となりました。

スタディーツアー詳細
日時  2005年11月30日(水)   9:30(現地集合)〜15:00(現地解散)
場所  情緒障害児短期治療施設「るんびに学園」 (理事長 藤 大慶師:浄土真宗本願寺派僧侶)
     住所 京都府綾部市十倉中町米谷16番
         
ツアー概要
9:30  JR綾部駅集合
10:00〜11:00 るんびに学園施設見学とスタッフおよび子どもたちとの交流
11:00〜12:30 理事長並びにスタッフによる事例報告と講習
12:30〜13:30 昼食と休憩
13:30〜15:00グループワーク
15:00解散 

施設紹介
 理事長の藤大慶さんは、大阪府茨木市にある浄土真宗本願寺派・西福寺の僧侶です。その寺で「悩み事相談」を始めたのをきっかけに、子どもと接するようになり、子ども会「るんびに日曜学校」をお寺で始め、さらにお寺で和太鼓を習う「るんびに太鼓」も開設しました。
 和太鼓を通して出会う子どものために粉骨砕身する中で、「今の環境から一時的にでも子どもを引き離さなければ……」という思いから、子どもたちと合宿生活を送る「短期るんびに苑」を開設。その場所探しに奔走する中で、情短施設の存在を知り、大勢の支援者に助けられながら平成15年の開園にこぎつけました。
 今後は、ひきこもりの青年たちが社会に出るための中間施設をつくることで、青年たちと学園の子どもたちが「家族」を体験する機会と場をつくりたいと考えています。




運営主体
 社会福祉法人るんびに苑
施設名称
 情緒障害児短期治療施設「るんびに学園」
所在地
 京都府綾部市十倉中町米谷16番地
敷地面積
 15,007u
建   物
 (1)本館棟 鉄骨造1階建    床面積 856.24平米
 (2)居住棟 鉄骨造2階建    同    592.92平米
 (3)分教室 軽量鉄骨造2階建 同    298.12平米
定   員
 30名
職   員
 21名(施設長、医師、セラピスト、指導員、保育士、看護師、栄養士、調理員等)
法人設立
 平成14年5月27日
開   園
 平成15年6月 1日
主催
 ・ てらネットEN−全国不登校・ひきこもり対応寺院ネットワーク
 ・(財)全国青少年教化協議会

 

◆ツアー内容

私たちは施設に到着すると、まずホールに安置されている仏さまに挨拶をし、引き続き、施設で暮らす子どもたちが和太鼓を演奏している映像を見せていただきました。その後、施設内を若いスタッフに案内していただき、生活している居住スペースや食堂、相談室などを拝見することができました。

 各部屋の中は非常に整えられ、子どもたち自ら整理整頓しているのが伝わってきました。スタッフの話によると、「子どもたちの定員は30名ということです。しかし児童指導員11名やその他スタッフで、一人あたり約3名ほどの子どもたちを受け持っています。他の情緒障害児短期治療施設より、多くのスタッフでケアにあたっている」とのことでした。

 施設の見学を終えたのち、会場を変え、施設の中澤正男園長(臨床発達心理士)より事例報告などをうかがうことができました。園長さんによると「子どもたちの心のケアに重要なのはやはり環境」ということでした。「施設に来る前の子どもたちは昼夜逆転の生活などをし、不健康な生活を送っているので生活改善などが必要」とも言っていました。

 しかし、子どもたちはこの施設に来ると、少しずつ生活を変えていきます。都会の生活リズムとは違う時間の流れが施設内外にあるからです。園長が言うには「田舎には、田舎の時間がある」ということでした。

 つまり、施設内では生活上の仕事が多く、夏は雑草が多く茂るため、雑草取りに汗を流し、冬は雪深いため、毎日の雪かきが欠かせません。スコップなどの道具の使い方を教えたり、些細な会話などをスタッフと交え、共に作業を行うことにより、自然に人との会話や地域で暮らす方々とコミュニケーションができるようになってくるということでした。

 また藤さんからは、行政とどのように協力し運営していくのか、資金の工面や行政の指導など、良い面悪い面を聞くことができました。確かに運営するには多くの資金や人の力が必要です。理事長や園長など個人の力だけでは到底なしえなかったことでした。その分、行政から資金を出してもらうことにより、子どもたちへのケアがしやすくなりました。

 しかし一方で、仏教的な視点での活動はしにくいようです。「行政は多岐にわたり指導をしてきます。例えば、食事を作る調理場は、火災などの危険を最小限にするためにオール電化にすること。また、食中毒などになったときに調査がしやすいように、毎回の食事を冷凍保存することなどです。私自身や子どもたちは調理場にさえも入ることができないほどです。ほんとうは、子どもたちと一緒に炊事ができるといいんですがね」と藤さんは語ります。

 子どもたちに接する基本的な姿勢としては、「行政や指導員、保育士、臨床心理士、職員、保護者など、子どもにかかわるすべての人のチームプレーが大切である」と述べていました。

 参加者はみな、今、目の前にある青少年問題に、どのように取り組むかを今回のスタディーツアーで学ぶことができたのではないかと思います。今後もこうした場所の訪問を通じて、参加者が青少年と向き合い、各地域での取り組みに活かしていただけることを切に望みます。(俊)(ぴっぱら2006年1月号より)

てらネットEN「不登校・ひきこもりを考える公開シンポジウム」in京都開催

てらネットEN(全青協共催)では、京都・キャンパスプラザ京都を会場として「不登校・ひきこもりを考える公開シンポジウム」を開催しました。このシンポジウムは、東京で開催した「てらネットEN設立記念シンポジウム」が反響を呼んだことを受け、当ネットワークの活動を関西方面でもご紹介するために、仏教各宗派の本山が多くある京都での開催となりました。またこの機会に、てらネットENへの加盟寺院を新たに発掘し、ネットワークの拡充を図りたいという意図もありました。

 会場には各宗派からの参加者や、現場で活躍中の教育者、当事者の親などが100名近く参加し、東京での開催同様不登校やひきこもり問題の深刻さと関心の高さをあらためて知る機会となりました。

 

シンポジウム詳細
シンポジウム日時  2005年11月29日(火)   13:30〜17:30
会場  キャンパスプラザ京都 4階第2講義室
     住所 京都市下京区西洞院通塩小路下る 
第一部 不登校・ひきこもりを考える公開シンポジウム<13:30〜17:00>
 ・ 基調講演「不登校・ひきこもりの現状とその対応」
   尾木直樹氏(教育評論家・法政大学教授)
 ・ パネルディスカッション「第三者および地域社会による支援のあり方」
   藤代寿樹氏(元当事者・全国ひきこもりKHJ親の会本部スタッフ/埼玉県)
   野田大燈師(報四恩精舎・社会福祉法人四恩の里/香川県)
   添田隆昭師(高野山高校校長/和歌山県)
   藤  大慶師(るんびに苑/京都府)
   神  仁(てらネットEN事務局・全青協主幹/東京都)
   

第二部 プレゼンテーション<17:00〜17:30>
 ・ ネットワーク参加寺院紹介
 ・ ネットワーク活動紹介

第三部 交流会(立食形式)<18:00〜19:30>
 ・キャンパスプラザ京都 2階ホールにて

主催
 ・ てらネットEN−全国不登校・ひきこもり対応寺院ネットワーク‐
 ・(財)全国青少年教化協議会

後援
 ・財団法人大学コンソーシアム京都

◇ 不登校・ひきこもりの現状と課題

 シンポジウムは2部構成で進められ、第1部は教育評論家の尾木直樹さんによる基調講演です。

 尾木さんはまず、最近ひきこもりという言葉が聞かれなくなったことにふれ、「ニートという言葉が氾濫し、ひきこもりをその枠にはめてしまった。これは危険なことです。基本的にニートとひきこもりは違います。ニート一本やりではなく、共通点を見ながらも、相対的違いを明らかにして、ひきこもりへの明確な支援策を確立してほしい」と話し、ニートに傾く最近の社会の関心や行政支援のあり方に警鐘を鳴らしました。

 そして、その支援には元当事者や、彼らの気持ちが理解できる若い人たちの協力が不可欠と話し、大人としては若者たちが自由に使える居場所作り等の後方支援が重要との考えを述べました。

不登校やひきこもりが起こる背景として「この問題の今日的特徴は、子どもや青年にとって、発達不全が起こる社会になってきたということです」と述べ、若者だけでなく、今日の社会を作ってきた大人の側にも責任があるのではと指摘しました。

 また、不登校・ひきこもりへの向き合い方としては「まず大切なのは、子どもを責めない、ありのままを認めていこうという姿勢が大事だと思います。部屋が汚い、日中に起きてこない昼夜逆転があったとしても、思考を変えて、前向きにとらえるよう心がけましょう。あわてず、あせらず、あきらめずの姿勢を大切にしていきたいですね」と家族に対してアドヴァイスを送りました。そして、自分の育て方に問題があったのではと悩む親に対しては「自分自身をも許せる心を養い、夢をもって生きていくことがいいと思います」と話し、親がひきこもらないで外に向いて接点をもつことの重要性を話し、基調講演を閉じました。

◇ てらネットENの活動

 第2部は活動内容についてのプレゼンテーションです。てらネットEN設立を呼びかけた全青協主幹の神仁より、スライドを使ったプレゼンテーションが行われました。てらネットENの主な活動は次の通りです。

■不登校やひきこもりで悩む青少年やその家族に対して、専門の相談窓口を開設し当事者や家族の要望・状況を考慮したうえで、ネットワーク参加寺院や団体への紹介とそのサポートを行う。

■リーフレット(小冊子)の配布やウェブサイトを通じて、当事者や家族への情報提供を行っていく。

不登校やひきこもりに関する一般向けのセミナーや僧侶向けの研修会を開催する。

 ネットワーク参加の寺院団体の紹介では、現在13寺院と4団体、精神科医や臨床心理士、弁護士などの専門家(顧問)の協力がありますが、さらに、寺院(愛媛県・神奈川県)のネットワーク参加が公表され、今後の課題としては、どんな地域でも対応できるネットワーク体制を目指していくことを説明しました。

◇ パネルディスカッション

 活動紹介に続いてパネルディスカッションが行われました。パネラーはネットワーク参加寺院代表として野田大燈さん(香川・喝破道場)、藤大慶さん(京都・るんびに学園)、添田隆昭さん(和歌山・高野山高校)と、元当事者で現在は自助グループの運営などに携わっている藤代寿樹さん(KHJ親の会本部スタッフ)が登壇し、コーディネーターを全青協の神が務めました。

 野田さんは「禅寺という環境を活かし、集団生活を通じて何人もの若者たちが元気になっていく姿を見てきた」と語り、生活改善により心の力がついてくることについて実感として話しました。また「若い人たちへの接し方として、叱咤激励で良くなっていった時代から変わってきました」と話し、最近の若者たちは「ガラスのように壊れやすい」と従来の教育方針では対応が難しいとの感想を述べました。

 藤さんは「自分が若い頃に経験してきた葛藤や悩みがきっと今の若い人たちにも通じるだろうと若者たちの相談にのったら、彼らが元気になっていったことが嬉しかった」と話し、お寺で悩み相談を始めたのがきっかけで、情緒障害児短期治療施設の設置に結びついた経験を話しました。

 添田さんは「自坊で預かった不登校の子どもとの生活を通じて、さまざまな能力をもった豊かな子どもが多かった」と話し、「繊細で責任感の強い子が不登校になったケースが多いが、その個性をどう伸ばしていってあげるかを大切にして取り組みたい」と語りました。

 元当事者の藤代さんは、自らがひきこもった原因として「学校のいじめや、身内の不幸がきっかけで強迫神経症となりひきこもりました」とつらい経験を話しました。立ち直るきっかけとしては「学校の悩み相談室に通うようになって、そこで同じような悩みをもった人がいるということを知り、接していくうちに立ち直っていったのです」と語り、人との接点が重要であると話しました。続いて各パネラーからの事例報告がありました。各パネラーともさまざまな若者たちとともに歩んできただけあって、重みのある体験談を披露していただきました。中には関わっていた若者が自殺をしてしまったなどの例もあり、若者たちへの支援の難しさも考えるきっかけとなりました。

 質疑応答では、当事者をもつ親から「息子がひきこもっています。お寺のようなゆったりした空間で、生活体験できれば自立に向かっていくのではと考えております」との質問に対し、パネラーの野田さんから「大事なのは、息子さん本人の気持ちがどうなのかということです。本当に変わりたいと考えているのかどうか。それから、お寺はけっしてゆったりとした場所ではありません。修行の場ですし、人を変えていく場所なのです。厳しい面もあるのですよ」との回答がありました。けっして突き放した訳ではなく、当事者の気持ちがまず第一であり、その家族も一緒に取り組み互いに成長していくという気持ちを持つことが大切なことですよと諭すように話していたのが印象に残りました。

◇ 今後の展開

 今後てらネットENでは、今の社会に対して、こうした深刻な現状を訴え、社会全体で一丸となって取り組むべき問題であるということを広く訴えていくため、積極的にシンポジウム・セミナーなどを開催したいと思います。また、全国からの相談に対応するために、相談窓口のフリーダイヤル化をすすめ、お寺での電話相談窓口(てらフォン)の設置を推進していくために、広く呼びかけていく予定です。いつの日かこのような相談がなくなることを願ってやみません。(総)(ぴっぱら2006年1月号より)

 

第一回青少年電話相談入門講座 開催

「青少年電話相談入門講座」の様子。1泊2日の研修ではたくさんのお坊さんが学びました。

  てらネットENと(財)全青協では、青少年が直面する不登校やひきこもりなどの諸問題に対し、支援活動に取り組みたいという僧侶を対象とした研修会を開催しました。以下はそのときの様子です。

◆青少年のための電話を 
 全青協では2005年3月15日と16日に、東京・築地本願寺を会場として、1泊2日の研修会「青少年電話相談入門講座〜てらフォン開設にむけて〜」を開催しました。青少年たちの直面する問題に取り組んできた、またはこれから取り組みたいと考えている僧侶、日頃から新しいお寺のあり方を模索している僧侶など30名が全国から集まりました。

◆てらフォンとは
 
 てらフォンとは、お寺における青少年のためのヘルプラインです。「チャイルドライン」という子どものための電話は、民間主体で68ほど全国に設置されています。「秘密は絶対誰にも言わない」「どんなことでも一緒に考える」「名前は言わなくていい」「嫌になったら切っていい」といった約束のもと、子どもたちの目線で悩みに耳を傾ける場として、声でつながる心の居場所となっています。 「てらフォン」では子どもばかりでなく、例えばひきこもりや自分探しをしている10〜30代までの電話も受け付けます。お寺で専用電話を開設し、心の駆け込み寺になってほしい。そんな願いが「てらフォン」には込められています。

◆青少年の現状 
 初日は、開校式、ガイダンスのあとに「現代社会における青少年問題」と題し、教育評論家の尾木直樹さんに、今日の日本社会で起こっている青少年問題について、包括的な話をいただきました。 尾木さんはまず冒頭で、最近起こった長崎小6女児殺害事件・大阪寝屋川教師殺傷事件についてふれました。事件を起こした子どもは、精神鑑定の結果普通の子どもであったことを説明し、「普通の子が簡単に人を刺してしまう。今の青少年問題のポイントはそこにあると思います」と現代社会における青少年問題の特徴を指摘しました。 そして、青少年の犯罪は、昔に比べ総数として減少している事実を挙げ、「犯罪は減っているのに、不安感が増しています。今の子は昔に比べて分かりにくい。社会病理として、普通の子の犯罪が増えているからです」と誰もが感じている不安感について分析しました。 青少年問題の最も深刻な原因のひとつとして「家庭で大事にされていないのでは」という見解を示して、「親は子どもが安心できる『家』を築くことが大切なのです。子どもをもっと抱きしめて下さい」と話し、青少年問題を解決するためには、親の意識改革が不可欠であると訴えて、話を締めくくりました。

◆電話相談をする上で 
 電話相談では、面談とは異なるさまざまな事態に直面することがあります。無言、匿名など「電話カウンセリングの特性」について、日本で初めて24時間対応の電話相談窓口を立ち上げた、日本いのちの電話連盟の斎藤友紀雄さんに伺いました。 斎藤さんはまず、「電話が若い世代を中心に情緒的なコミュニケーションの手段となっている」と語り、匿名の電話相談は、近づきやすく、しかも安心して相談できることを説明しました。また、面談との違いとして、自己開示が容易なことや、いつでもどこでも相談できる即時性があることを語り、「若者や情緒的に不安の強い人たちには格好の媒体であり、彼らの精神的な孤立を防ぐことができる」とその特徴について述べました。 電話相談の受け手には「明らかに相談者に問題があると感じた場合でも、その現実は現実として見つめ、批評するのではなく、気持ちに寄り添うことが大事」と話し、相談者の心を受け止める姿勢が最も重要であることを訴えました。

◆厳しい現実 
 夜の部では、事例報告として、実際にお寺で相談業務を行っている4人の住職に、実践経験を踏まえた体験談を話していただきました。 関わっていた相談者に自殺された経験を語った方や、さまざまな深刻な悩みを聞く側として、その受け手のケアも必要であること、スーパーバイザーを置くことの重要性を訴える方、常日頃から自分の応対が正しかったのか、正しくなかったのか自問自答している方など、それぞれの経験を話していただきました。参加者からは「相談を受けることがどれだけ大変か考えさせられました」、「中途半端な気持ちではできない。真剣勝負でなければ」などの感想が聞かれました。 こうして初日のプログラムは終了しました。すでに時間は10時を過ぎており、9時間にも及ぶハードなスケジュールでしたが、途切れることがなく参加者の目が輝いていたことが、とても印象に残りました。

◆ロールプレイの中で 
 翌日は、今回の研修会の山場である「ロールプレイ」を行いました。ロールプレイとは、ある役(今回は電話の受け手とかけ手)を演じることで、その役の人にどんな気持ちの変化が生じるのかなどを擬似的に体感するための実技訓練を指します。 今回は、チャイルドライン支援センター理事で、電話の受け手研修を長年実施されてきた山本多賀子さんを講師にお迎えしました。そして、自分が実際に電話相談をする、あるいは受けるというロールプレイが始まりました。研修中は、今回の研修が電話相談であることを想定して、電話の受け手とかけ手はお互いに顔を見ないようにしながら話をしました。さらに、観察者という役が設けられ、後でロールプレイの感想を2人に伝えるように指示がありました。 参加者の多くはこうしたロールプレイは初めてということもあり、当初は緊張や戸惑いが見られましたが、実際に役に入り込むと一転、みな真剣な様子で各役割をこなしている姿がとても印象的でした。ロールプレイ終了後の振り返りで、自分では気づかない話し方の盲点や、悩みを聞いてもらうことでどんな気持ちの変化が生じるのかなど、実感を伴った深い気づきが得られた様子でした。 最後に山本さんから「電話の受け手としてさまざまな相談に対応できるようになるには、自分自身を解放できること、自分自身のことについて気づきを深めていくことが大事になる」というお話があり、ロールプレイは終了しました。

◆てらフォン開設に向けて 
 研修会の最後の講義として、全青協主幹の神が、実際にお寺での相談窓口の開設・運営に向けガイダンスを行いました。今回のガイダンスは、参加者から寄せられた、電話相談を受けるにあたっての不安や疑問点などに答える形で行われました。 まず実際の運営面では、同じ志を持つ仲間2人以上を集めて運営委員会を実施していくことと、その委員会で、何のための相談窓口なのかという基本的理念をみんなで共有することが大切になるということでした。それをベースにしながら、幅広いネットワークを形成すること、電話窓口の広報を行うこと、記録をしっかりとつけることなどが大切だと述べました。講義後、電話相談に特有の問題についていくつもの質問があがりました。 「相手の名前を聞かないのはなぜか」という質問には、「守秘義務の観点から、名前を聞くことで学校や住所が特定されてしまうという相談者の不安を防止するため」という説明をしました。 また、「無言電話にどう対応するのか」という質問には、「間や空白を怖がらず、基本的には相手を待つこと、切らないで待っているということを相手に伝えることが大切」と答えました。「そもそも問題の解決は必要か」との問いには、「こちらから指示をして解決に導くのではなく、相談者自身が気づきを得ていく手助けをすることが原則」と答えました。 最後に、今回の研修を積んだ方の中から、来年度に実際に電話相談を立ち上げる人が出てくればという期待が述べられ、2日間にわたる研修会は終了しました。 今回の研修を通じて、電話相談の持つ有効性や、実際に相談を受けることの難しさも体感していただいたことと思います。今後は、青少年問題の各論やさらに詳細な運営ガイダンスを盛り込んだ「実践講座」を開催します。(ぴっぱら2005年5月号より)